他業界の動向を士業に取り入れる

司法書士事務所コンサルタント 小高 健詩 (オダカ ケンジ)

皆様、明けましておめでとうございます。船井総研士業グループのメンバー一同、皆様の事務所の業績アップや経営力アップのお手伝いを全力でサポートしますので、本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、2015年の第一回目のテーマは、「完全個別対応の素晴らしさと従業員にやりがい」です。今回のコラムは、先日お邪魔した福岡県久留米市のあかつき幼稚園の取り組みが非常に素晴らしく、士業事務所にも十分に参考になると思いましたのでご紹介させて頂きます。完全個別対応の素晴らしさと従業員にやりがいを持ってもらう素晴らしい事例です。

●久留米あかつき幼稚園(HP: http://www.fujitagakuen.ed.jp

あかつきノート

あかつき幼稚園の藤田理事長は、「サービス業の究極は完全個別対応であること」と言い切ります。そしてまたこの理想を追求しているのです。具体的にはあかつきノートという担任と保護者の交換日記のようなノートです。担任の先生は大体1クラス30名弱の園児に対して、毎日4行ほどのコメント欄にその日その園児が発言したことや園での様子を毎日書き、保護者がそれを読みます。そして保護者は2週間に1回の頻度で子供のことで気になったことや家庭でのイベントの様子などを写真付の文章を書きます。私が見た3冊のあかつきノートはどれも親の愛情が手に取るようにわかるくらい克明に子供の様子が記されていました。ここまでされて喜ばない親はいません。親側の記録欄にはどの親もわが子のことを記録してくれる担任の先生への感謝の言葉が溢れてかえっています。担任の先生は通常業務に加えてこのノートを書き続けるため、並大抵の負担ではないはずですが親からの感謝の言葉を掛けてもらうことで、仕事にやりがいを感じ継続ずることが出来るそうです。このあかつきノートはなんと25年もの長きに渡り継続しているそうです。
あかつきノートが用意されていることによって園児一人ずつに毎日コメントを書かないといけません。そうなると担任の先生は一人ひとりの園児の行動に対して注意を払うようになります。あかつきノートは担任から園児への関心を喚起するのにも一役買っているのです。アウトプットの場が事前に用意されていることでインプットを促す好事例です。
また、このノートは卒業した園児が、漢字を読める3,4年生になった頃、改めて読み返すそうです。そして、卒園生は自分がどれだけ愛されていたかをその膨大な量のノートによって、また手書きであることから感じ取るのです。そして思いやりの溢れる人間に成長していくのです。
あかつきノート  参考: http://www.fujitagakuen.ed.jp/note/

卒業アルバム

通常の卒業アルバムは自分の子供が写っている写真は全体のうち、数枚ということが少なくありません。しかしあかつき幼稚園はその子が写っている写真ばかりを集めて、その子供専用のアルバムを先生方が1冊ずつ手作りしています。個別対応もここまで徹底すると見事だと思います。園長の言葉にもあった通りに完全個別対応が仕組み化されているのです。

理念経営

ここまで読み進めて頂くと、あかつき幼稚園の先生は非常にハードワークをしているように感じられますが、結婚出産以外での離職率は低く、わずかに数パーセントです。ではなぜこのように他園よりも手間が掛かる仕事であっても辞めるという発想にはならないのでしょうか。(給与水準は周辺の園と変わりません。)これを可能にするのが2つ、「教職員に向けたモットー」と「やりがいの創出」です。
あかつき幼稚園の教育理念は「善人教育・・・損得ではなく善悪で判断する人を育てる」というものです。これも素晴らしいのですが、教職員に向けたモットーがまた素晴らしいのです。そのモットーとは、「喜んで大変なことをしよう!」というものです。ここには「どうせやるなら、自ら進んで喜でやった方がいいじゃないか!」という気持ち良いの前向きさとひたむきさが感じられます。船井総研にも「1:1.6:1.6の2乗の法則」というものがあります。これは、人から言われて無理やり行った時の仕事の成果を「1」とすると、納得して行った時の成果はその「1.6」倍、さらに、自ら自発的に行った時は「1.6の2乗」すなわち「2.56」倍の成果が上がるのです。つまり、人間は自発的に動いた場合により大きな力を発揮するということを法則化したものです。あかつき幼稚園の「喜んで大変なことをしよう!」というモットーの「喜んで」の部分はこの法則と合致して人間の心理の本質を突くものです。
それから「やりがいの創出」については、この幼稚園ほど先生方がお客様である保護者から喜ばれるものはないでしょう。例えば、「あかつきノート」は我が子の様子を詳細に記録してくれる先生に対して保護者だけでなく祖父祖母からも感謝されます。その子専用の卒業アルバムももっと感謝されます。こういうお客様からの感謝は、やりがいに直結し、苦しくなったときにこそパワーを与えてくれます。

先生方の事務所でも「やりがいの創出を仕組み化して、スタッフが進んでお客様の”完全個別対応サービス”をやるような仕掛けを考えていきましょうね。」
私個人としては、登記書類などの業務処理は効率的にするべきですが、その前の打ち合わせや営業方法、連絡などは個別対応をそろそろ導入すべきだと思います。
例えば、「やりがいを持たせる」ということであれば、登記書類だけを毎日作成しているメンバーには、その立会いの現場に連れて行きどんなふうに自分の作成した書類が使われているかをその目で見せてあげたり、登記発注者に引き合わせていつも書類を作成しているメンバーであることをお客様に紹介してあげたりすることが登記部門の場合はやる気に繋がると思います。
法人畑ばかりではなく、たまには「お客様とやり取りをすることでやりがいを感じやすい」相続部門などにローテーションで配置転換などをしてあげるのもよいと思います。

司法書士事務所コンサルタント 小高 健詩 (オダカ ケンジ)

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